- リスティング広告のABテストの実施方法
- ABテストで見るべき項目
- ABテスト実施時の注意点
リスティング広告のABテストは、広告運用の効果を高めるために欠かせない手法です。しかし、誤った方法で実施すると、時間と予算の両方を浪費してしまう可能性があります。
この記事では、リスティング広告のABテストを成功に導くための具体的なステップをご紹介します。ABテストの経験がない方でも安心して始められるよう、テストを実施するために役立つツールや設定方法など必要な情報を網羅した記事となっていますので、ぜひ参考にしてください。
リスティング広告のABテスト:媒体ごとに異なる設定方法、重要性
リスティング広告を最大限に活用するためには、ABテストが欠かせません。
Googleでは、ABテスト機能が直接管理画面に組み込まれており、異なるバージョンの広告の効果を簡単に比較できます。しかし、Yahoo!にはABテスト機能がなく、媒体によって実施方法が異なるため、注意が必要です。
ABテストの目的は、コンバージョン数やCPA(顧客獲得単価)の改善のみに留まらず、広告の全体的な成果を向上させることです。ブランドの認知度を高めたりユーザーの関与を深めたりなど、直接的な数値に表れない効果も、ABテストの目的に含まれます。そのためABテストでは、総合的な広告成果の改善を目指す必要があるといえます。
また、広告媒体によってABテストの設定方法が異なる点にも注意が必要です。テストを始める前に、各プラットフォームの仕様を理解し、計画を十分に検討することが重要です。
リスティング広告のABテストで改善できるKPI
ABテストは、リスティング広告の成果を向上させるために有効です。コンバージョン率(CVR)、クリック率(CTR)、インプレッション数といった指標を改善するのに大いに役立ちます。
それぞれの詳細を確認していきましょう。
CVR(コンバージョン率)
ABテストを利用してCVRを改善することは、広告の効果を高める上で中心的な役割を果たします。
CVRを上げるには、ユーザーが広告から遷移するランディングページの内容がポイントです。ユーザーの悩みに沿った内容であれば、購入や資料請求といったコンバージョンにつながる可能性が高まります。CVRが向上することで、CPA(顧客獲得単価)の改善にも直結するでしょう。
CTR(クリック率)
クリック率(CTR)は、広告がどれだけユーザーの関心を引きつけたかを示す、重要な指標です。CTRを上げるためには、検索ユーザーの悩みに寄り添った内容にする必要があります。
ABテストを活用することで、異なる広告文の効果を比較し、よりCTRが高い文言を見つけ出すことが可能です。
たとえば、バージョンAのCTRが高く、CVRが低い場合、ユーザーの興味は引けているものの、購入や申し込みといった実際のアクションまでは促せていない、ということになります。
このようなデータをもとに、CTRとCVRのバランスを取りながら広告文を最適化することが重要です。ABテストを使って異なる広告文のバージョンを試し、どの文言が最も効果的かを見極められます。
インプレッション数
インプレッション数とは、広告がどれだけ表示されたかを示す指標であり、広告のリーチの広さを測定します。ABテストの利用によって、広告の要素がインプレッション数にどのように影響するかの分析が可能です。
広告の品質を高めることは、インプレッション数を増加させる上で重要です。品質の高い広告は、検索キーワードとの関連性で高い評価を受け、より多くのインプレッションを獲得できます。
ABテストを通じて広告文やLPの内容を改善すれば、広告全体の品質向上に期待できるでしょう。ただし、広告の予算やクリック単価の設定などほかの要因によってもインプレッション数は左右されるため、ABテストですべてをコントロールできるわけではありません。その点には留意が必要です。
リスティング広告のABテストで比較できる項目
リスティング広告のABテストを実施する際には、特定の要素を変更し、結果を比較します。
主に比較される項目は、「広告のテキスト」「遷移先のランディングページ(LP)」そして「自動入札設定」です。これらの項目について説明します。
広告のテキスト
広告の見出しやタイトル、説明文は、ユーザーが最初に目にする部分です。これらの要素をABテストによって最適化し、インプレッション数やCTR(クリック率)を向上させましょう。
異なるバージョンの広告文をテストすることで、どの文言がターゲットオーディエンスにとって最も魅力的かを判断し、広告のパフォーマンスを高められます。
遷移先のLP
広告からの遷移先であるLP(ランディングページ)は、広告をクリックした後のユーザー体験に直結する部分です。LPの内容やデザインをABテストすることで、CVR(コンバージョン率)の向上が見込めます。
ユーザーが求める情報や興味を引く情報をLPで提供できれば、購入や資料請求といったコンバージョンにつながる可能性も飛躍的に高まるでしょう。
自動入札
自動入札は、広告の入札価格を自動で最適化する機能です。自動入札の設定自体をABテストすることで、どの入札戦略が最も効果的かを判断し、インプレッション数の改善に期待できます。
ABテストの結果に基づいて自動入札設定の微調整をおこなうことで、広告予算の効率的な運用や、広告の表示回数の増加を見込めるでしょう。
このようなABテストを通じて、リスティング広告の各要素がどのようにパフォーマンスに影響を与えるかを把握し、最終的な広告成果の向上につなげられます。
リスティング広告のABテストを実施するメリット
リスティング広告のABテストは、広告のパフォーマンスを最適化するために強力な手法です。ABテストをおこなうことで、広告キャンペーンの効果を正確に測定し、より効率的な広告出稿が叶います。
ABテストを実施する主なメリットについて見ていきましょう。
同期間・同条件での比較により高精度な効果検証ができる
効果を検証する際には、どの要因がどのような効果・影響を与えるのかをクリアにすることが重要です。
その点、ABテストの大きなメリットとして、異なるバージョンにおける同じ期間・条件下での効果を比較できる点が挙げられます。
同条件下での比較により、どの要素がパフォーマンスにプラスの影響を与え、どの要素がマイナスの影響を与えるかを明確に判断できるため、精度の高い効果検証が可能です。
たとえば、季節によってコンバージョンなどの数値が変動する商品の場合、異なる時期に実施されたテストでは、時期の違いによる影響が結果に反映されてしまいます。その点、ABテストでは同じ期間に同じ条件でテストをおこなうため、広告の変更点が実際にどれだけ効果をもたらしたのかを正確に把握できるのです。
1~2週間程度の短いサイクルで成果の改善を見込める
ABテストは迅速に設定できるため、短期間で効果検証が可能です。設定後1週間から2週間の運用で、どの広告がより効果的であるかを判断し、成果を向上させるための仮説を立てられます。
短い期間で広告の効果検証がおこなえるために、リスティング広告の内容を素早く改善できる点は、ABテストの大きなメリットの1つです。
少ない工数で運用の改善ポイントを把握できる
ABテストは、人的なリソースが比較的少なくても実施できるため、コストや時間の節約にもつながります。
タイトルや見出しのようなテキスト変更は、新しいコピーを書くだけで済むため、手間がかかりません。
また、LP(ランディングページ)の一部を変更してテストをおこなう場合についても、工夫次第では大きな費用や手間をかけずにABテストを実施できます。ABテストを少ない工数で実施できれば、効率よく運用の改善ポイントを見つけ出し、より効果的な広告戦略を展開できます。
リスティング広告におけるABテストを実施するステップ
ABテストは、広告の成果を改善するために効果的な手法です。
リスティング広告において非常に重要なABテストを具体的にどのように進めていくのか、実施ステップをわかりやすく解説します。
ステップ1:目標や目的・検証対象の明確化をおこなう
ABテストを開始する前に、達成したい目標と検証したい要素を明確に定めることが重要です。
改善したいKPI、予算、目標数値を、ABテストの実施前に決定します。これらの項目がABテストをおこなう前に決まることで、テストの方向性が定まり、後続のプロセスも円滑に進められるでしょう。
また、どの項目の改善のために、どの程度の費用をかけて、どこまで数値を伸ばしたいのかといったシミュレーションも、忘れずに実施することをおすすめします。
ステップ2:ABテストの設定をおこなう
テストの目標や目的を決めたら、ABテストの設定をおこないます。GoogleとYahoo!では設定方法が異なるため、それぞれの設定方法を見ていきましょう。
Googleリスティング広告のA/Bテスト設定方法
Googleリスティング広告におけるA/Bテストの設定は、大まかに以下のステップにわけられます。
- 管理画面にてキャンペーンアイコンをクリックしセクションメニューで「コンバージョン」プルダウンをクリック
- 「テスト」をクリックし「カスタムテスト」を選択
- 「テストの設定」にてテストの名前と説明を入力
- テストを変更するには最大で2つの目標を選択し成功指標を測定
- 「テストのスケジュール設定」>「テスト期間」にて開始日と期間を選択
- 「保存」をクリック → テストの作成完了・テスト実行開始
まずは、Google広告の管理画面を開き、「テスト」セクションに移動し、「カスタムテスト」のオプションから「+」を選択して新しいテストを作成します。カスタムテストは「検索キャンペーン」と「ディスプレイキャンペーン」に対応可能です。テスト名を入力、テストをおこないたいキャンペーンを選択し、ABテストで検証したい箇所の内容を変更します。入札戦略のテストをおこなう場合、テストキャンペーンの入札をこの時点で設定する必要があるため、ご注意ください。
次に「schedule」を選択し、テストの目標と分配比率を設定しましょう。テスト目標では、コンバージョン、クリック数、表示回数などの指標を選び、そのアクションとして「引き上げ」「引き下げ」「有意な変化なし」のいずれかを選択します。たとえば、コンバージョン単価を下げたい場合は「コンバージョン単価」と「引き下げ」を選びます。分配比率は、とくに目的がない限りは50%に設定するのがおすすめです。
検索広告の場合、「詳細設定」から分配比率の詳細設定をおこなえます。検索ベースの設定では、検索のたびにテストキャンペーンと元のキャンペーンのいずれかがランダムに選ばれるのが通常です。cookieベースでは、ユーザーが検索した回数にかかわらず一方のキャンペーンのみが表示されるため、検索ベースの設定のほうがcookieベースの設定よりもデータが早く蓄積される傾向にあります。
最後に、ABテストの期間と同期の設定をおこないます。テスト開始日は最短で翌日から設定可能です。ABテスト中に元のキャンペーンでおこなった変更をテストキャンペーンに自動的に反映させたい場合は、同期をオンにします。ただし、元のキャンペーン→テストキャンペーンへの同期のみが対象であり、テストキャンペーンに変更を加えても元のキャンペーンに反映されない点には注意してください。
以上の手順でカスタムテストの設定は完了です。
ABテストを実施し、広告のパフォーマンスを詳細に分析、最適化するためのデータを得られるようになります。
詳細はGoogle広告の公式サイトをご確認ください。
Yahoo!リスティング広告にABテスト機能はない
Yahoo!リスティング広告では、ABテスト機能が提供されていません。そのため、効果的なABテストを実施するには、手動でキャンペーンを複製し、異なる要素をテストする必要があります。
Yahoo!リスティング広告でABテストをおこなうには、管理画面で広告グループを選択し、「選択した広告をコピー」で複製します。新しいキャンペーンにコピーされた広告を確認し、テスト要素を変更した後に出稿してABテストを開始…というのが基本的な流れです。
ABテストの結果に関しては、キャンペーンのパフォーマンスを定期的にチェックし、CTRやCVRなどのKPIを分析します。
ステップ3:ABテストの実施~効果・検証をおこなう
ABテストの設定が完了したら、実際にABテストを実施し、効果を検証しましょう。
結果を分析した後は、得られた知見を次回のABテストの計画に活かし、広告のパフォーマンス向上につなげていきます。このサイクルを繰り返すことで、リスティング広告のパフォーマンスを徐々に改善していくことが可能です。
ただし、ABテストの効果検証における注意点として、ABテストを実施したすべての項目に関して効果検証がおこなえるとは限らない、という点が挙げられます。ABテストをおこなったバージョン間で優位差を確認できなかった、検索ボリュームが少なくなかったために十分なサンプルデータが集まらなかった、といったことも十分に考えられるからです。
リスティング広告のABテストを実施する際の注意点
リスティング広告のABテストは長期的な成果を目指す戦略の1つですが、予算の分散が短期的な成果に影響を与える可能性があります。
正確な検証と適切な予算配分により、信頼性の高いデータ分析をおこなうことが重要です。
リスティング広告のABテストを実施する際の注意点を確認しましょう。
予算が分散することで短期的な成果を低下させてしまう可能性がある
リスティング広告のABテストを実施する際には、予算の分散という問題が発生する可能性があります。
1つの広告キャンペーンに対して複数のバリエーションをテストするため、それぞれのバリエーションに割り当てられる予算が減少し、短期的な成果が低下してしまうという問題です。
ABテストにより広告の露出が減少した場合、本来得られたものよりもクリック数やコンバージョン数が少なくなるため、短期間での成果を重視する場合は、慎重にABテストを計画することが求められます。
しかし、この短期的な成果の低下は、長期的な広告効果の最適化という観点からは必要な投資ともいえます。ABテストによって得られるデータは、広告のパフォーマンスを向上させるための貴重な情報源となり、最終的にはより高いROIを達成することにつながるでしょう。
検証方法を間違えると仮説も見誤る
ABテストを実施する際には、検証方法を正確に設計することが重要です。
たとえば、タイトルと見出しを同時に変更してしまうと、どちらが成果に寄与したのかを特定できません。適切に検証するためには、一度に変更する要素は1つに絞り、効果を測定します。
適切な効果検証によって、ABテストをおこなった要素の影響を明確に把握し、広告のパフォーマンスを効果的に向上させられるのです。また、テストの結果が有意であることを確認するためには、統計的な有意性を考慮に入れた上でデータを解釈する必要があります。これにより、偶発的な変動ではなく、実際に成果に影響を与える要因の特定につながるでしょう。
少額の予算ではABテストのとして機能しない可能性がある
ABテストを成功させるためには、十分な予算を確保することが重要です。予算が限られている場合、テストに必要なデータ量を集められず、結果の信頼性が低下します。
少額の予算では、ABテストの実施に十分なレベルの広告配信回数を保てない可能性があります。その結果、得られるデータが統計的な有意性を欠く可能性も否めません。信頼できるデータを得るためには、テストの各バリエーションが十分な露出を得られるように予算を設定することが重要です。
予算を確保できない場合は、テスト期間を長く取ることで、より多くのデータを集められます。しかし、ABテストの結果が出るまでに時間がかかり、市場環境の変化による影響を受けるリスクもある点には、注意が必要です。
ABテストの際には、予算を慎重に設定し、テストの目的と期待される成果に見合った投資がおこなわれるようにしましょう。
まとめ
この記事では、リスティング広告のABテストについて解説しました。リスティング広告におけるABテストは、広告のパフォーマンスを向上させるためになくてはならない施策です。
ABテストを適切に実施することで、コンバージョン数やCPA(顧客獲得単価)の改善だけではなく、広告の全体的な成果向上に期待が持てます。
ABテストは一度きりの活動ではなく、継続的に取り組むことが重要です。テストの結果を分析し、得られた知見を次回のABテストに活かすことで、広告のパフォーマンスを徐々に向上させられます。
この記事でご紹介した設定方法や注意点を参考に、ABテストに取り組んでみてください。